仮想通貨(暗号資産)の投資詐欺に遭ったときやセルフGOXしたときの損失は確定申告で控除できる?予期せぬ損失が出たときの対処法

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暗号資産(以下、仮想通貨)の世界では、新たな投資機会が生まれると共に、投資詐欺の手口が多様化しています。
近年はSNSやマッチングサイトを通じて勧誘を行い、対象者に「絶対に儲かる」といった期待を持たせ、お金を集める詐欺が後を絶ちません。

また、アドレスの誤りにより自分以外のアドレスに送金してしまい、所持していた仮想通貨を完全に失ってしまったということも、損失が発生する状況としてあり得ます。

では実際に、仮想通貨の投資詐欺に遭ってしまったら、誤送金等により損失を被ってしまったときはどのような対応を取ればよいのでしょうか。
本記事では、詐欺の手口や対応策、確定申告上の扱いや税金の額を減らす方法などを紹介します。
投資詐欺の被害に遭ってしまった方や、被害に遭うのを未然に予防したい方は参考にしてくださいね。

目次

仮想通貨の投資詐欺や損失が出てしまうパターン

仮想通貨の詐欺の手口は多岐にわたります。
直接ターゲットを勧誘するものからシステムをハッキングするものなど、年々巧妙化しているのが特徴です。

また、詐欺には該当しなくとも、取引以外で所有していた仮想通貨を失ってしまう状況もあります。

では、どのような状況で損失が生まれてしまうのか、いくつかのパターンを見てみましょう。

GOX(ゴックス)

「GOX」とは、2014年に発生した大手取引所のMt.GOX(マウントゴックス)がハッキングされた事件に由来した呼び名で、現在ではハッキングにより資産が取り出せなくなってしまう状況を主に指します。
また、資金の送付先を間違えるなどの自身の不注意によって資金を失うことを「セルフGOX」と呼ぶこともあります。

投資詐欺には該当しませんが、GOXまたはセルフGOXした際には資産を大きく失うことになります。

このような状況を防ぐためには、コールドウォレットに対応している仮想通貨取引所を利用するなど、取引所の管理体制を確認してから利用するといった手が有効です。
また、セルフGOXはアドレスの入力ミスにより起こることがあるため、「テスト送金を行う」「送金先を別媒体に記録しておく」などの策を取ると、ミスなく取引を行えるでしょう。

ゼロトランスファー

ゼロトランスファー(アドレスポイズニング)とは、詐欺業者が送金履歴に載っているユーザーのアドレスと似たアドレスを作成することで、ユーザーによる暗号資産の誤送金を狙うフィッシング詐欺のことです。

過去には大手取引所であるバイナンスがこのゼロトランスファーのターゲットにされ、実際の金銭的損失は無かったものの、対応策として28億円もの資産を凍結しました。
ゼロトランスファーは送金履歴を捏造するなど手口が巧妙であるため、利用者は手口を理解したうえで送金先を入念に確認することが大切です。

ラグプル

ラグプルとは投資家から資金を集めるだけ集め、そのまま業者が姿を消してしまう詐欺のことです。
「絨毯(lug)を引っ張られ(pull)て体制を崩してしまう」ことに由来し、仮想通貨界隈ではスラングで「ラグる」と言うこともあります。

ラグプルは「新しい知人」「SNSの知り合い」などから勧誘されることが多く、仮想通貨取引に馴染みのない消費者もターゲットにされるのが特徴です。
投資や投機で必ず儲かることはありえないため、そのような口上があれば警戒し、対象者と距離を置きましょう。

確定申告で「雑損控除」は適用できる?

仮想通貨の投資詐欺やセルフGOXしてしまったとき、残念ながら損失額を経費として計上することはできません。
そのため詐欺被害により損失を被ったとしても、利益分の税金は払う必要があります。

税金を減らす方法として、使える可能性が残っている制度が「雑損控除」です。
雑損控除とは災害・盗難・横領などの損害を受けた場合に、一定額の所得控除を受けることができる仕組みのことを言います。

雑損控除の対象となる損害には以下のようなものがあります。

  • 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
  • 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
  • 害虫などの生物による異常な災害
  • 盗難
  • 横領

参考:国税庁 No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき

ここで注意しなくてはならないのが「詐欺被害は雑損控除の対象ではない」という事実です。

その一方で「盗難被害」は雑損控除の対象内となります。
つまり、被害の原因が「詐欺か盗難か」によって、控除できるかどうかが決まるといってよいでしょう。

実際に控除が適用できる場合は、次のうち多い方の金額が控除可能となります。

  1. (損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
  2. (災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

控除が適用されるかどうかはケースによって異なるため、最終的には税理士や弁護士など、専門家に判断をあおぐとよいでしょう。

投資詐欺に遭っても納税義務は残るって本当?

前述の通り、投資詐欺の被害に遭ったとしても、損害額を経費として計上することはできません。
そのため、利益が発生していたなど納税義務が残っている場合は、そのまま利益額分を納税する必要があります。

また税金は破産法により「非免責債権」と定義されているため、税金が払えず破産申請をしても納税義務が残ります。一方で、ポジションを確定していなければ納税義務は発生しないため、現段階で税金を払う余力がない、かつまだ仮想通貨を保有している方は、戦略的に利益確定を先延ばしにすることも視野に入れるとよいでしょう。

どうしても税金が支払えない場合でも、要件を満たせば1年未満の「納税の猶予」を受けることができます。
その要件には「納税について誠実な意思を有すると認められること」という項目もあるため、国税庁には不都合を隠さず、誠実な態度で相談に臨むとよいでしょう。

参照:国税庁 No.9206 国税を期限内に納付できないとき

仮想通貨の投資詐欺に遭った後に工夫できること

仮想通貨の投資詐欺に遭ってしまったら、実際にどのような行動を起こせばよいのでしょうか。

本項では投資詐欺に遭ってしまったらやっておきたい行動や工夫として、2つを紹介します。

警察や高額詐欺被害対策センターなどに相談する

投資詐欺に遭ったら、まずは警察や消費者生活センターへ相談しましょう。
具体的な相談先や支援内容などについて説明します。

警察に被害届を提出

被害に気付いたら、真っ先に警察に被害届を出しましょう。
届けを提出することで被害の記録が残るため、「詐欺師に刑事責任を負わせられる」「損害賠償を受け取れる可能性がある」といった利点が生まれます。

被害届に記載する項目には以下のようなものがあります。

  • 自分の情報(名前、住所、生年月日など)
  • 詐欺が起こった状況(いつ、どんな状況で起こったか)
  • 失った金額
  • 犯人の情報(使用されていたアカウント、メールアドレスなど)

また、取引履歴やメッセージの犯人とのやり取りなどもスクリーンショットを撮り、保存しておくと安心です。警察には以下のような方法で相談することができます。

状況対応策
とりあえず被害届を出したい、電話をしたい警察の被害相談窓口に電話
インターネットで詐欺に遭った、サイバー犯罪の専門的アドバイスが欲しいサイバー犯罪相談窓口で申請
相談してよいのか迷っている#9110に電話、相談
被害に遭ってすぐ110番に電話

また、何らかの事情で「恐喝されている」「命の危険がある」といった場合はすぐ110番をし、身の安全を守ることも大切です。

消費生活センターへ相談

消費生活センターは消費活動で起こった被害に対して助言を行う機関です。
消費者ホットライン「188」へ電話をするほか、各地の消費生活センターなどに相談することもできます。

消費者センターには仮想通貨関連の相談が毎年数千件寄せられているほか、相談内容によって弁護士や適切な窓口を紹介してもらうことができるため、困ったらすぐに相談をしてみましょう。

その年の仮想通貨による所得を圧縮する

仮想通貨の利益は「所得」として扱われ、税金を支払う必要があります。
一方、所得額を減らすことで支払う税金額も減らせるため、経費を増やし所得の圧縮を試みるのも方法のひとつです。

仮想通貨では、取引による損失も経費として扱うことができます。

  • 現在大きな利益が出ている
  • 含み損を抱えた通貨(未決済)を保有している

上記の条件が揃っている場合は、あえて含み損を確定することで所得額が圧縮され、支払う税金額を少なくすることができます。

所得額を圧縮する経費についてはこちらでも解説しています。

仮想通貨取引で確定申告する時は何が経費にできる?税金を減らすための工夫を紹介

まとめ

仮想通貨詐欺に遭ったりGOXしてしまったりしても、現状では残念ながら税金の支払義務は発生してしまいます。
このような状況になった場合は1人で解決しようとせず、警察や消費生活センター、税理士などの専門家への相談を試みましょう。

また、ブロックチェーン自体は安全性の高い技術ですが、仮想通貨取引所の管理体制に脆弱性があることも少なくありません。
「絶対に大丈夫」といったことはありませんが、次なる詐欺被害を防ぐためにも「その会社がどんな対策をしているか」を調べ、被害に遭う確率をできるだけ下げた状態で仮想通貨取引を行うとよいでしょう。

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