仮想通貨で億り人になったら税金地獄?1億円の所得を超えた際の税金シミュレーションと節税対策

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暗号資産(以下、仮想通貨)で1億円以上の利益を得た人を「億り人」と言うようなネットミームがあります。
ただ、仮想通貨はその性質から、税法上でも特殊な扱いとなっており、億り人となった人ほど税金に苦しめられたのではないかと考えられます。

本記事では、なぜ多くの億り人が税金によって苦しんでしまったのか、また実際にどのくらいの税金が課せられるのかなどを、時代背景とともに紹介します。

目次

仮想通貨の「億り人」が税金で苦しんだ理由とは

仮想通貨ブームが巻き起こった2017〜2018年頃に「億り人」というネットミームが誕生しました。
億り人とは、仮想通貨取引や株式投資などで1億円以上の資産を築いた投資家のことで、その呼称は、2008年に公開された映画「おくりびと」に由来しているといわれています。

2017年ごろからビットコイン(BTC)の価格が数倍に跳ねあがったことをきっかけに、多くの日本人が仮想通貨取引に参入し、当時のバブルの波に乗ることができた方は、多くの利益を得られたでしょう。

その一方で、利益を得たときに忘れてはならないのが、所得税の存在です。

2017年以前、仮想通貨取引は世の中にそれほど浸透しておらず、利益を出している投資家の数は限られていました。
また、仮想通貨の税制は株式投資やFXと比べても分かりにくく、全容を把握するのは税理士でも難しいとされていたほどです。

このような背景が起因し、仮想通貨に関する所得を正確に申告できない人や、申告を放置してしまった人が続出しました。

確定申告を適切に行わないと、本来の納税額からさらに10〜40%ほど上乗せして税金がかかる「追徴課税」の対象になります。
ただでさえ税率が高くなりがちな仮想通貨ですが、追徴課税まで課されると利益額によっては数千万円単位の税金がのしかかってしまいます。

また、ビットコインは2018年に差し掛かったタイミングで暴落したため、課税義務がありながら大きな損失を背負ってしまうというケースもありました。

このように「正しく確定申告ができなかった・もしくは忘れてしまった」、「税金の支払いが必要となったのに、直後の暴落で利益が消えた」といったことから、億り人でも税金に苦しむ状況にあった可能性が高いと考えられます。

仮想通貨取引で「税金がかかるタイミング」

仮想通貨で税金が発生するタイミングは「仮想通貨を売却し、日本円で受け取ったとき」だけではありません。
この複雑性が億り人をさらに苦しめることとなりました。

では、どのようなタイミングで所得とみなされて課税対象になり、税金が発生するのでしょうか。

運用中の仮想通貨を利益確定し、日本円で受け取ったとき

仮想通貨を売却して含み益を確定し、日本円などの法定通貨で受け取ったタイミングで所得が発生、課税の対象となります。一般的に「仮想通貨で儲けた」というと、まずイメージされるのがこのタイミングです。

課税される金額(所得額)は以下のように算出します。

所得額=(仮想通貨の売却価額)ー(仮想通貨の1単位あたりの取得価額)×数量

仮想通貨を、違う種類の仮想通貨に交換したとき

例えばビットコインをイーサリアム(ETH)に交換するなど、仮想通貨同士の交換をしたときも課税対象になります。税法では単純に「ビットコインをイーサリアムに交換した」という扱いにはならず、「途中で日本円が媒介した」という考え方で課税されるため、注意が必要です。

つまりこの場合は、「ビットコインを日本円に交換したあと、日本円とイーサリアムを交換した」という扱いになります。

所得額の計算式は以下の通りです。

所得額=(購入する仮想通貨の時価)ー(売却する仮想通貨の取得価額)

当時はこのようなルールを知らず「日本円に戻さなければ税金がかからない」と勘違いした投資家が続出。結果として、納税に窮迫するケースが相次ぎました。

例として、下記のようなケースで考えてみましょう。

  1. 2017年10月に1,000万円で買ったビットコインが2,000万円になった
  2. 同年12月、2,000万円のビットコインを全額イーサリアムに交換
  3. 2018年1月にイーサリアムが暴落して総額300万円分となり、1,700万円相当の含み損を抱えることとなる

1〜2の時点でビットコインはイーサリアムに交換されているため、「2,000万円-1,000万円=1,000万円」と計算され、1,000万円の所得が発生しています。
一方でイーサリアムはその後暴落しており、1,700万円の含み損を抱えてしまいました。

単純に「現金化したときのみ所得が発生する」のであれば【300万-1000万=700万円の含み損】と考えられますが、上記ケースだと、税法上では年内(1月~12月まで)の所得を基に税金を算出するため、「2017年は1,000万円の所得がある」と扱われてしまいます。

このような状態になると、税金の支払いに必要な現金は手元に残っていないばかりか、暴落によってむしろ含み損が膨らんでおり、金銭的な余裕はありません。

このように税法の複雑さ、また暴騰と暴落が年末年始に重なったこともきっかけとなり、首が回らなくなった投資家が続出したのです。

仮想通貨で商品やサービスを決済したとき

仮想通貨で商品・サービスを購入したタイミングでも所得が発生します。このような場合も「日本円に換金してから商品を購入した」という扱いになります。

所得額=(商品の価格)-(仮想通貨の1単位あたりの取得価額)× 数量

まだ仮想通貨を支払いに使えるお店はそう多くはありませんが、大手家電量販店「ビックカメラ」では支払方法の1つにビットコインを採用しています。

参照:ビックカメラ.com 「お支払い方法:ビットコイン(bitcoin)」

ステーキングやマイニングなどで仮想通貨を得たとき

ステーキングやマイニング、レンディングの報酬として仮想通貨を得たときも所得が生じます。

ここで3つの用語についておさらいしましょう。

用語説明
マイニング (Mining)仮想通貨の取引記録をブロックチェーンに追加する計算処理を行って利益を得ること。
レンディング (Lending)自分の保有する仮想通貨を他人に貸し出して利息を得ること。
ステーキング (Staking)保有する仮想通貨をネットワーク上で預け、新通貨の生成や取引の検証作業に参加して利益を得ること。

上記はどれも仕組みが複雑ですが、「レンディング」や「ステーキング」の場合、複雑な工程を仮想通貨取引所が行ってくれるため、投資家は仮想通貨を預けるだけで報酬を得ることができます。

また、課税のタイミングは「報酬として仮想通貨を得た」ときだけでなく「報酬として得た仮想通貨を売却・交換したとき」にも発生します。

いずれにせよ、仮想通貨を受け取った時点で日本円を持っていなくても課税対象となるため、確定申告時に忘れず計上する必要があります。

ハードフォークによる分岐やエアドロップで得た仮想通貨を売却したとき

ブロックチェーンの仕様を変更する「ハードフォーク」や、仮想通貨をもらえるイベントである「エアドロップ」などで得た仮想通貨を売却したときも、課税タイミングとなります。

今回のケースではほかの課税タイミングとは違い、取得価格が存在しません。
そのため、仮想通貨を受け取ったときは課税対象外で、売却・交換したときのみ課税対象となります。

仮想通貨は「雑所得」。その税率は?

仮想通貨は所得税法の「総合課税」に分類されます。

総合課税とは、対象の科目(給与所得や不動産所得など)の所得金額を合計して税額を計算する制度のことです。
下記の表の通り、総合課税は所得が上がると共に税率も上がる「累進課税」を採用しています。

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円
引用:国税庁 「No.2260 所得税の税率」

所得税率は最大45%となり、そこに住民税や復興特別所得税(一律10%)も加えると、税額は最大55%となります。
また、自営業者などが加入している国民健康保険料は前年度の所得額で決まるため、一時的に億り人になった自営業者の負担は大きくなりがちです。

このように、ある日突然億り人になると「税負担と保険料の増額」が課せられるため、手放しで喜べないことが分かります。

仮想通貨で1億円の利益が出たら、納税額はどうなる?

では、仮想通貨で1億円の利益が出たら、納税額はどうなるでしょうか。実際にシミュレーションしてみましょう。

所得税は4,000万円以上で最大税率となります。そのため所得が1億円の場合、税率が45%、控除額は479万6,000円です。計算式は以下のようになります。

1億円×45%-479万6,000円=4,020万4,000円

さらに所得割の住民税は全国一律10%であるため、追加で「1億円×10%=1,000万円」も課税金額となります。

上記から、所得にかかる分の課税額は、「4,020万4,000円+1,000万円=5,020万4,000円」と計算することができます。

この計算は「1億円×55%-479万6,000円」という計算式でも割り出せるため、所得4,000万円以上の納税額を計算するときに活用してみましょう。

億り人になりそうなときほどやっておきたい効果的な節税対策

億り人になると、納税額が増大してしまうことが分かりました。
ではどうしたら少しでも税負担を減らせるでしょうか。

ここからは、仮想通貨における節税対策について紹介します。

法人化する

仮想通貨取引で定期的に高額収益を得ているケースで、最も節税効果がある方法が法人化です。

個人が所得を得ると住民税もあわせて最大55%の税率がかかりますが、法人化すると所得税ではなく法人税の対象となり、税率が最大約33%となります。
もし1億円の所得を得た場合、約2,000万円ほどの節税効果があるため、その差は明確です。

所得税では1,800万円以上で税率が40%になります。
そのため、コンスタントに1,800万円以上稼いでいる場合は「法人化の方が節税になる」と考えることができます。

経費を多く計上する

経費を多く計上すると、仮想通貨の利益を圧縮することができます。
仮想通貨取引では、以下のような出費を経費として扱うことができます。

  • 仮想通貨の取得費
  • 取引手数料や送金手数料
  • 書籍代やセミナー代
  • 取引に利用する電子機器やソフトウェアなど

算入できる経費については、こちらでも解説しています。

仮想通貨取引で確定申告する時は何が経費にできる?税金を減らすための工夫を紹介

損益通算を行う

節税対策には、損失と利益を相殺する「損益通算」を行うという手もあります。

例えば、仮想通貨で高額の利益を出すとその額に所得税がかかってしまいます。
しかし、保有している別の仮想通貨が大きな含み損になっている場合、これを売却することで損失が計上され、所得額を減らすことができます。

  1. ビットコインで1,000万円の利益を確定
  2. イーサリアムで500万円の損失を確定
  3. 1,000万円-500万円=500万円。これが課税所得となる

しかし、仮想通貨は雑所得に該当しないもの(FXや不動産など)と損益通算することはできません。
あくまでも仮想通貨同士のみで実施する点に注意しましょう。

まとめ

大きな収益を上げた「億り人」は今でも羨望の的になりがちですが、税率の高さや利益計算の複雑性などが重なるため、当事者には大きな負担がかかります。
また、仮想通貨は現金化しなくても所得が発生するケースもあることから、納税分の現金を手元に用意しておく必要もあります。

納税を放置して追徴課税の対象になると、さらに高額な税金が課せられてしまうため、自分の身を守るためには「いつのタイミングで税金がかかるのか」を先に把握しておくことが大切です。
本記事などを参考に、仮想通貨の税金に対する理解を深めましょう。

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