仮想通貨(暗号資産)※取引において、基本的には20万円以上の所得が発生した場合に確定申告が必要です。※以降は仮想通貨と表記。
ただしこの20万円とは、単純に取引所から銀行口座へ引き出した日本円の金額というシンプルなものではありません。
「まだ日本円に出金していないから確定申告しなくても大丈夫だろう…」と思っていると、後々申告漏れによる罰則を受ける可能性があります。
実は、仮想通貨取引で税金支払いの対象となるタイミングは多く、特に複数回の取引をしているなら注意しなければいけません。
そこでこの記事では、仮想通貨取引における税金発生の対象となるタイミングについて解説していきます。
仮想通貨取引で税金が発生するタイミング11選
仮想通貨取引において、税金が発生するタイミング11選を紹介します。
- 仮想通貨の売却
- 仮想通貨で商品の決済
- 仮想通貨同士の交換
- エアドロップによる報酬獲得
- ハードフォークによる新しい仮想通貨の取得
- マイニングによる報酬の取得
- レンディングやステーキングによる報酬の取得
- NFTの売買による売上の発生
- Play to Earnなどのサービス利用で報酬を獲得
- 第三者間との仮想通貨取引
- 給与として仮想通貨の受け取り
実際に国税庁が公表しておりますので、これらをしっかりとおさえれば確定申告をすべきかどうかに悩みません。
詳しく解説していきます。
1.仮想通貨を売却
まず、仮想通貨を売却した時点で損益が発生します。
確定申告をするときは、仮想通貨を取得したときの取得価額(※)と売却価格との差額を損益額として算出しましょう。
なお、仮想通貨を売却して取得した日本円を取引所から出金したかどうかは、損益の計算上は影響がありません。
※取得価額:仮想通貨を取得するために支払った金額(手数料なども含む)。取得価額の算定方法は採用する計算方法により異なります。
<保有している通貨の時価が上がったときは?>
保有通貨の時価が上がって含み益が発生したとき、その通貨を売却せず保有している限りでは損益は発生しません。
つまり、課税対象にもなりませんので確定申告は不要です。通貨の売却または決済などによって損益を実現させると課税対象となります。
2.仮想通貨で商品の決済
仮想通貨で商品またはサービスを購入する場合も、決済時点で損益が発生するため注意しましょう。
というのも、この取引は仮想通貨を一度売却したあとに、日本円に換金したうえで商品・サービスを購入したという程で扱われるからです。
商品やサービスの決済時点での価格と仮想通貨を取得した価格の差額でプラスが生じている場合、利益が発生します。つまり、決済時の損益金額を導き出す計算式は以下の通りとなります。
「商品・サービス決済時の価格」ー「仮想通貨の取得価額」=「所得額」
仮想通貨での決済時もしっかりと課税対象となる点には注意しましょう。
3.仮想通貨同士の交換
日本円と仮想通貨によるやりとりだけに限らず、仮想通貨同士の交換も課税対象の例外ではありません。
例えば、BTCをETHに引き換える取引は、BTCを一度売却して日本円とし、その金額でETHを購入する取引と同じです。
つまり、仮想通貨の売却と購入(決済)を行っているため税金の支払い対象に該当します。
この点、仮想通貨を日本円にしていなければ課税されないと考える個人投資家も少なくありません。
ですが、実際には2種類の仮想通貨による引き換えも同様に課税され、国税当局も税務調査でチェックを行う事項であるため注意が必要です。
漏れなく所得を認識し、適切な損益計算を行いましょう。
4.エアドロップによる報酬獲得
エアドロップで仮想通貨を入手した際は、以下2つの場合で扱いが異なります。
- 入手した通貨に市場価値がついている場合(取引所で取り扱いがあるなど)
- 通貨に市場価値がついていない場合(未上場の通貨など)
まず、すでに通貨の価値がついている場合ですが、入手時点の時価を損益として認識し、その金額がそのまま取得価額となります。つまり、入手した報酬額は全額課税対象です。
一方、通貨の価値がまだついていない場合は、取得価額が「0」の扱いなので損益も発生しません。
ただし、通貨の売却時に価格が上昇していて利益が出た場合、所得として換算されます。
5.ハードフォークによる新しい仮想通貨の取得
イーサリアムクラシック(2016年7月)やビットコインキャッシュ(2017年8月)、シンボル(2021年12月)など、ハードフォークによって新しい通貨が付与されることがあります。
この場合、付与された時の取得価額は0となり、付与時点では損益は発生しません。これはハードフォーク直後において、新たな仮想通貨の市場が存在せず、価値のないものとみなされるためです。
その後、その通貨の価値が上がり、売却した時は売却総額がそのまま所得金額となります。
6.マイニングによる報酬の取得
マイニングによって取得した仮想通貨は、取得した時点で損益が発生します。
一方で、ソフトやPC関連設備の購入、電気代など、マイニングの際にかかった費用は経費として計上可能。そのため、マイニングで取得した仮想通貨の時価とマイニングにかかった費用との差額が所得となります。
「マイニングで取得した通貨の時価」ー「マイニング作業にかかった費用」=「所得額」
7.レンディングやステーキングによる報酬の取得
レンディングやステーキングによる報酬として仮想通貨を取得した場合にも課税対象です。
それぞれ、申告する時価を決定するタイミングは以下の通り。
- ステーキングの報酬として通貨を取得したとき
- レンディングで利用料が付与されたとき
なお、類似のサービスであるハーベストやファーミングで損益が発生した場合も対象です。
レンディングは消費税の課税対象に該当します。
2年前の消費税に該当する課税対象の売り上げが1000万円を超える事業者や企業は、納税が必要となるため注意してください。
8.NFTの売買による売上の発生
NFT(Non-Fungible Token)の取引には仮想通貨が使用されるため、NFTの売買をして利益を得た場合も課税対象です。
具体的には以下のようなケースが想定されるでしょう。
- NFTの購入
- 保有するNFT売却
- NFTアートなどの販売
- ブロックチェーンゲームで獲得したアイテムの販売
- NFT関連銘柄の取引
NFTを販売した対価として仮想通貨を受け取ったときの時価が税金の対象です。なお、NFTの保有は税金の対象になりません。
9.Play to Earnなどのサービス利用で報酬を獲得
近年、Play to EarnやMove to Earn、Listen to Earnなど、ゲームのプレイやウォーキングなど 日常生活を通じて仮想通貨報酬が得られる画期的なサービスが流行しています。
このようなサービスを体験して獲得した報酬も課税対象です。
課税対象となる時価を決定するタイミングは報酬の受け取り時であるため、いつどれほどの報酬を受け取ったのかはメモを取って記録しておきましょう。
娯楽要素が強い新しいサービスですが、税金には注意してください。
10.第三者間との仮想通貨取引
また、下記のような第三者間で仮想通貨を取引する場合にも課税対象です。
- 家族に仮想通貨を贈与(相続を含む)
- 仮想通貨を代理で購入
- 家族や友人と仮想通貨の貸し借り
- 取引所を介さずに仮想通貨を取引(相対取引)
家族であっても一定額以上の仮想通貨を受け取った場合、贈与税の対象です。そしてまだ事例は少ないものの、遺産として仮想通貨を取得すると相続税の対象となります。
家族や友人とのちょっとした取引だからと油断せず、確定申告をしましょう。
11.給料として仮想通貨の受け取り
日本で働いた際の給与は基本的には日本円で支払われます。しかし、労務上の条件をクリアすれば仮想通貨での給与支払いも可能。
この場合、給与所得として、支給時の時価に応じた金額が課税対象です。
会社は日本円で源泉徴収したうえで、該当する給料を仮想通貨に換えており、仮想通貨を受け取った会社員が給与の確定申告をする必要はありません。
ただし、給与で受け取った仮想通貨が高騰し増えた場合、その分は利益となり雑所得とみなされます。つまり、確定申告をしなければいけません。
例えば、50万円分の仮想通貨を給料として受け取り、70万円に値上がりした時点で売却したとします。このケースでは差額の20万円分が雑所得となるため、確定申告が必要です。
Tether(USDT)などのステーブルコインは税金の対象になる?
暗号資産の中には、価格の安定性実現に向けて設計されたステーブルコインと呼ばれる通貨があります。
主に次のようなものが有名でしょう。
- Tether(USDT)
- USDC(USD Coin)
- UST(TerraUSD)
- Binance USD (BUSD)
- JPYC(JPY Coin)
ステーブルコインも同様に仮想通貨であり、先ほど挙げた11選のケースに該当すれば確定申告をしなければいけません。
価格が安定しているため、BTCからUSDTへ交換といった取引も多くなるでしょう。確定申告が必要である場合は忘れずに済ませてください。
税金の対象となる仮想通貨取引のタイミングを把握して適切に確定申告へ臨もう
ここまで紹介してきたように、仮想通貨の取引やサービスを利用して仮想通貨を受け取ったときなど、税金の対象となるタイミングはさまざま。
ステーキングやレンディング、NFT、Play to Earnゲームなど、仮想通貨を使う新たなサービスも登場しています。
今後も新たなサービスがリリースされる可能性もあるため、仮想通貨を扱うなら忘れずにチェックしておきましょう。そうすれば、漏れのない適切な確定申告ができます。
なお、確定申告をするにあたって、経費の集計などの専門知識も欠かせません。不明点はそのままにせず、税理士や税務署に相談したうえで行うことを推奨します。
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