総合課税と分離課税の違いは?それぞれのメリット・デメリットを解説

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「総合課税」と「分離課税」はどちらも所得税の課税方法のことですが、対象となる所得税の種類や、課税の仕方に違いがあります。

この記事では、総合課税と分離課税の違いや、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
確定申告にも関わってくる内容なので、確定申告者はぜひ押さえておきましょう。

目次

総合課税と分離課税の違いとそれぞれの特徴

「総合課税」「分離課税」とは、所得税の課税方法のことです。
総合課税は、対象の所得をすべて合算して税額を計算するのに対し、分離課税は個別で税額を計算し課税します。

分離課税はさらに「申告分離課税」と「源泉分離課税」2つの課税方法があります。

区分内容適用される税率方式
総合課税ほかの所得と合算して税額を計算する超過累進税率
分離課税:申告分離課税ほかの所得と合算せずに個別で課税する所得の種類に応じて、定められた税率で計算
分離課税:源泉分離課税一定の税金を天引きする一律

それぞれについて、簡単に解説していきましょう。

総合課税とは

総合課税とは、各所得金額を合計し、その総額に税率をかけて税額を計算する課税方法です。

たとえば、給与所得1,000万円と不動産所得1,000万円がある場合、両方の所得を足した2,000万円から扶養控除などの各種所得控除を差し引き、その残額に税率をかけて計算します。

所得とは、収入金額から必要経費を差し引いたものを指します。

10種類ある所得のうち、総合課税の対象となるのは以下の所得です。

所得の種類所得の概要対象の範囲
事業所得事業を通じて得た所得例)製造業、小売業、サービス業など一部対象外あり
配当所得法人から受ける利益の配当(株式配当金)や、剰余金の分配金などによる所得確定申告をしない場合などは対象外
不動産所得土地やアパートなどの不動産の貸付け、船舶や航空機の貸付け、借地権の設定などによって得た所得すべて対象
給与所得給与、役員報酬、賞与などの所得すべて対象
譲渡所得資産を譲渡したときに生じる所得例)土地、建物、株式、宝石、書画、骨とうなど土地・建物、株式などの譲渡による譲渡所得は対象外
一時所得一時的な性質の所得例)懸賞、福引の賞金品、生命保険の満期保険金など一部対象外あり
利子所得預貯金や国債などの利子一般的には源泉分離課税が適用されており、20.315%の税金が源泉徴収されている
雑所得どの所得にも該当しない所得例)国民年金、税金の還付金、外貨預金の為替差益など一部対象外あり
参考:No.2220 総合課税制度|国税庁

給与所得と不動産所得は、すべての所得が総合課税の対象となりますが、事業所得や譲渡所得などのように、場合によっては分離課税の対象となる所得もあるため注意しましょう。

仮想通貨で得た利益は、現在所得税の中の「雑所得」に含まれており、総合課税の対象となっています。

分離課税とは

分離課税は、他の所得と合算せず個別で課税する課税方法です。
所得税は原則、総合課税で課税されることになっていますが、例外的にこの分離課税が適用されるものもあります。

分離課税は、以下の2種類に分けられます。

  • 申告分離課税:所得の種類に応じて定められた税率を計算して、確定申告で納税する
  • 源泉分離課税:源泉徴収によって税金が天引きされる

申告分離課税では、所得を得た人が自分で税金を計算し、確定申告で納税します。
一方の源泉分離課税では、源泉徴収によって税金が天引きされて課税関係が終了するため、確定申告の必要はありません。

分離課税の対象となる所得は以下の通りです。
税率は所得の種類や内容によって、個別に定められています。

所得の種類所得の概要対象の範囲
退職所得退職によって勤務先から受け取る所得すべて対象
山林所得伐採した山林や立木の譲渡により生じた所得すべて対象
譲渡所得土地、建物、株式などの譲渡による譲渡所得土地、建物、株式以外は総合課税
利子所得預貯金の利子などによる所得一部対象外
雑所得FX取引や一定の先物取引による雑所得多くは総合課税
配当所得上場株式などの配当所得場合によって選択可能
事業所得事業規模の株式譲渡や、先物取引による事業所得基本的には総合課税
一時所得保険期間5年以下の一時払い養老保険金など多くは総合課税
参考:No.2240 申告分離課税制度|国税庁No.2230 源泉分離課税制度|国税庁

暗号資産(以下、仮想通貨)取引での利益は総合課税ですが、株式やFX取引は申告分離課税です。
資産運用の手段という点では同じでも、最大45%がかかる仮想通貨取引と、20.315%で済む株式投資やFXとでは、税負担の重さが明らかに異なります。

とはいえ、もともと総合課税だったFXも、現在では申告分離課税へと変更されました。
現在は総合課税の対象となっている仮想通貨取引の所得も「分離課税にしよう」という声が上がっており、今後の動きが注目されています。

仮想通貨による所得が総合課税から申告分離課税になるとどうなる?税率の変化や改正への期待を解説

総合課税のメリット・デメリット

ここからは、総合課税のメリット・デメリットを紹介します。

総合課税のメリット

総合課税の最大のメリットは、損益通算が広く利用できる点です。
損益通算とは、赤字があった所得を他の黒字の所得と相殺することをいいます。

損益通算ができるのは、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4種類です。

たとえば、事業所得で50万円の損失が出た場合、給与所得から事業所得の損失(50万円分)を差し引くことができます。
損益通算する順番や例外はあるものの、損失を相殺できることで所得額を減らし、税負担を抑えることができます。

総合課税のデメリット

総合課税のデメリットは、所得によって税率が変わる「超過累進課税」の仕組みが適用されている点です。
所得税の税率は、5%〜最大45%までの7段階があり、所得に応じて段階的にアップしていきます。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,330,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

これに加えて別途10%の住民税等もかかってくるので、最大で所得の半分以上の55%が税金で持っていかれてしまうなどという事態にもなりかねません。

また確定申告の手間と労力がかかる点もデメリットといえるでしょう。

分離課税のメリット・デメリット

続いて分離課税のメリット・デメリットを紹介します。

分離課税のメリット

分離課税のメリットは、所得税の負担を抑えやすい点です。
繰り返しになりますが、総合課税では所得が高くなるにつれ税率もアップしていく累進課税が適用されており、最大で45%、住民税を入れると55%もの税率がかかってきます。

対して分離課税の税率は、所得が多くなっても税率が一定のため、そのぶん税金を抑えられます。

また、申告分離課税では確定申告が必須ですが、源泉分離課税では支払いが終わった時点で課税関係も終了するので、確定申告が不要なところも利点といえるでしょう。

分離課税のデメリット

分離課税のデメリットは、山林所得以外は損益通算できない点です。

たとえば、自分が所有していた土地を購入時より低い価格で売却したとします。
これは譲渡損失に当たりますが、これを自分の給与所得から差し引くことはできません。

事業所得や譲渡所得で損失が生じても損益通算や繰越控除が適用されず、税金対策として役立てられないのはデメリットといえるでしょう。

まとめ

総合課税は対象の所得を合算して計算する課税方式、分離課税は対象の所得を個別で計算する課税方式です。
一部例外はありますが、総合課税と分離課税のどちらの課税方法にするかは自分で選択できるものではなく、所得の種類によって分類されています。

総合課税と分離課税にはそれぞれ、損益通算ができる所得が限られていたり、その順序も決まっていたりと、さまざまな制約があります。
こうしたルールを確認しながら、正しく確定申告を行うことが大事です。

そして仮想通貨は現在総合課税ですが、将来的に分離課税となるよう働きかける動きも見られています。
その動向に今後も注目していきましょう。

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