仮想通貨(暗号資産)をそのまま相続すると二重課税になる?仮想通貨が財産にある場合の対応とポイント

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相続する財産の中に暗号資産(以下、仮想通貨)がある場合、相続以降の税負担が大きくなりやすい傾向があります。
そのため、仮想通貨は財産として残すよりも整理しておいた方が、相続する人への負担を減らすことにつながります。

この記事では、仮想通貨を相続する際に知っておきたいポイントを紹介します。

目次

仮想通貨の相続の税負担が大きくなりやすい理由

親などから仮想通貨を相続した場合、相続税や雑所得の対象になる可能性があります。
その税率や、税負担が大きくなりやすい背景について解説しましょう。

相続時に「相続税」がかかる

仮想通貨は相続時に「相続財産」として扱われるため、相続税の対象になります。
相続税の最高税率は55%と、比較的高めである点が特徴です。

法定相続分に応じる所得金額税率控除額
1,000万円以下10%0円
1,000万円超から3,000万円以下15%50万円
3,000万円超から5,000万円以下20%200万円
5,000万円超から1億円以下30%700万円
1億円超から2億円以下40%1,700万円
2億円超から3億円以下45%2,700万円
3億円超から6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
参考:No.4155 相続税の税率

相続税率は、相続時の時価をベースに「相続税評価額」にて求められますが、遺産額に比例して税率が高くなる仕組み(累進課税)となっているため、遺産額によっては税負担が大きくなる場合があります。

仮想通貨を含めた相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要です。
基礎控除とは、税金がかからない金額のことであり、相続では以下の計算式で算出します。

相続税の基礎控除の計算式

3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば、法定相続人(民法上、相続できる人)が2人いる場合は、3,000万円 + 1,200万円 = 4,200万円が基礎控除となります。
相続財産の合計額が4,200万円以内であれば相続税はかかりませんが、超える場合は相続税が発生するため、申告が必要です。

このときに「税負担を逃れるために申告しなかったり、わざと過少申告したりすると、ペナルティとして延滞税や加算税が課される可能性がありますのでご注意ください。

相続した仮想通貨を売却したら「雑所得」の対象に

相続した仮想通貨を売却した場合に所得税がかかる点も、税負担が大きくなりやすい理由のひとつです。

仮想通貨の取引で得た利益は、所得のうち「雑所得」の対象となり、給与所得などの収入と合算した額に応じて税率が決まります。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,330,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」

利益に応じて税率は45%まで上がり、住民税が約10%かかることも考えると、税率は最大で約55%にも達します。
また、このときに、事前に納めた相続税が差し引かれることはありません。

よって、払ったはずの相続税も含めて所得税の対象になってしまう、という問題点も抱えているのです。

仮想通貨には取得費加算の特例は「適用されない」

税制に詳しい人の中には、「取得費加算が適用されるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、仮想通貨においては取得費加算の特例は適用されません。

なぜなら、取得費加算の特例は「譲渡所得に限る」からです。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できます。
(注)この特例は譲渡所得のみに適用がある特例ですので、株式等の譲渡による事業所得および雑所得については、適用できません。

引用元:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁

仮想通貨は、譲渡所得ではなく「雑所得」の扱いとなるため、現時点では特例の要件に該当せず、残念ながら特例が適用されません。

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仮想通貨の税金計算はGtax

仮想通貨の相続でかかる税金の総額をシミュレーションしてみよう

ここで、仮想通貨の相続に関する税額に関して、ひとつ例を挙げてみましょう。

下記例の場合、相続税は以下のようになります。
なお、仮想通貨以外の財産や控除は無しとして、仮想通貨の相続のみとして簡単にシミュレーションしていきます。

例:祖父が購入していた仮想通貨(ビットコイン)を孫が売却する場合

祖父はビットコインを200万円で購入していた(@0.2円・1,000万ビットコイン)祖父の死亡時のレートは@240円

上記のシーンで発生する相続税

相続時の相続財産…1,000万分 × @240円 = 24億円
相続税額…24億円 × 相続税率55% - 控除額7,200万円 = 12億4,800万円 

相続税支払いのためにビットコインを売却した際に生じる所得税

※ビットコインは時価24億円のまま売れたと仮定
所得税額 … 24億円 × 所得税率45% - 控除額479万6,000円 = 10億7,520万4,000円
住民税10% = 2億4,000万円
所得税 + 住民税 = 13億1,520万4,000円

相続税だけでも約13億円の支払いが生じ、この相続税を支払うために、ビットコインをすべて日本円に換えて売却すると、通常通りに所得税・住民税がかかり、総額で「25億6,320万4,000円」の税負担となります。
仮想通貨を売却して24億円を得ても、手元に残るどころか、1億6,000万円以上の赤字が生じることになります。。

仮想通貨を相続する際、税金をなるべく減らすコツ

誰でも税金による赤字は避けたいものです。
なるべく税金を減らすための解決策としては、現金化や海外移住などの方法が挙げられます。

相続が発生する前に仮想通貨を現金化してもらう

なるべく税金を減らすには、相続が発生する前に仮想通貨を現金化してもらう方法が有効です。
日本円での相続となれば、相続税と所得税の二重負担の問題を回避できるでしょう。

のちのち家族が相続で困らないように、仮想通貨を含めた資産をリストアップしておくのも、大切な対策だといえます。

親子で海外に移住する

極端な例になりますが、親子で海外に移住するのも、ひとつの方法です。
日本を1年以上離れる人は原則として「非居住者」扱いになり、日本に資産がない場合は日本の税金がかからなくなります。
相続発生時も、相続される人・相続する人のどちらも非居住者で、日本に資産がなければ、日本の相続税の対象外になります。

仮想通貨を相続するときの手順

仮想通貨の相続手続きは、「仮想通貨取引所に連絡」「書類の受け取り・返送」「払い戻し手続き」の流れで進みます。

被相続人が取引していた仮想通貨取引所に連絡、死亡の事実を伝える

被相続人(亡くなった人)が利用していた仮想通貨取引所に連絡し、被相続人が亡くなったことを伝えましょう。

連絡をする際に必要になる情報は、各取引所によって異なるため、お問い合わせフォームなどでご確認ください。
たとえば、「被相続人の情報」や「連絡した人の情報代表相続人の情報」などが記載事項としてあります。

また、以下3点の送付も依頼しておくと、以降の相続手続きがスムーズに進みます。
いずれも、仮想通貨の相続税評価額を求める際に利用するものです。

  • 相続開始日の残高証明書
  • 相続開始日の日本円換算レート
  • 過去の取引履歴

仮想通貨取引所から必要書類を受け取り、返送する

仮想通貨取引所に連絡をすると、さまざまな案内が届きます。
通知された案内に従い、必要書類を返送しましょう。

必要書類には、相続届や被相続人の戸籍謄本、印鑑証明書なども含まれます。

送った書類を返却してもらえるところと返却してもらえないところがあるため、他の手続きでも必要になりそうな書類は、多めに取得しておくとよいでしょう。

取引所から仮想通貨の払い戻しを受ける

書類の確認後、仮想通貨の払い戻しが行われます。
払い戻し方法は「代表相続人の銀行口座に、日本円に換金されて振り込まれる」か「仮想通貨のまま代表相続人の口座に移される」の2通りが主に取られます。

仮想通貨のまま移したい場合には、代表相続人がその取引所に新たに口座を開設する必要があります。

また払い戻し方法は、自分で選択できるところもあれば、あらかじめ決まっているところもあるので、その取引所に確認しましょう。

相続手続き完了のお知らせの送付をもって、相続手続きは完了となります。

仮想通貨を相続すると「二重課税」状態になる可能性がある

仮想通貨は親やパートナーなどから相続することが可能ですが、相続税や所得税は、所得の増加とともに税率も上がる累進課税がとられており、二重課税のような状態になることから、仮に多額の仮想通貨を相続したとしても、財産が手元に残るどころかマイナスに転じるケースもある点に注意が必要です。

のちのち相続トラブルへと発展してしまわないよう、生前に資産をリストアップして、家族も把握できる状態にしておいたり、事前に現金化しておいたりすることが大切です。
万が一相続が発生した際には、税理士など専門家の力を借りて、適切な手続きを進めてください。

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